戦争トラウマ
先日映画「父と家族とわたしと」を観ました。映画は父親や家族から虐待や家庭内暴力を受けて育ち、さらに大人になってから暴力の連鎖を断ち切るために懸命に戦っているひとたちの話でした。そして、その暴力の原因が実はアジア太平洋戦争で兵士として戦ったことに起因していました。戦後復員したものの、家族に暴力をふるったり、うなされたり、働けなくなったりと過酷な戦争体験で追った心の傷(PTSD)が亡霊のように今もなお家族を苦しめ、DVや依存症などの深刻な影響を及ぼしています。戦争中日本軍は専門の治療期間を整備する一方で、表向きは存在しないとして、放置してきましたが、昨年やっと国がしょうけい館による調査方針を示し、調査結果の常設展示を始めました。しかし、元兵士の家族を持つ市民グループは常設展示を一歩前進と評価するものの「元兵士や家族の苦しみの実態を伝えるためには、より広範な実態調査を国主導で行うべきだ」と国による調査を求めています。
アメリカではベトナム帰還兵のPTSDが社会問題化しましたが、日本では国による把握もされず、精神疾患への差別や偏見を恐れて家族もいいだすことができませんでした。上映会後の島田陽磨監督のトークで「イラク戦争の取材で現地に残ったときに目にしたアメリカの兵士を見て驚いた。アメリカ軍の兵士は屈強だと思っていたが、その多くが20歳前後のひ弱な普通の若者だった。話を聞くと貧困地域の出身で大学進学のために軍の奨学金を得るために入隊したが、イラクに送られてきたという。その後その若者たちがどうなったか調べてみると戦闘で死んだ若者より帰還後に自殺した若者が何倍もいた」と話していました。戦後80年が経った今、国が始めた戦争によって体だけでなく心も病んでしまうこと、戦闘は終わってもその影響を本人も家族も受け苦しむことを多くの人が知るべきだと思いました。戦争をしなければ、戦争によるPTSDは生まれません。国が責任をもって実態を調査し国民へ戦争トラウマが及ぼす影響を知らせるべきです。

