若年性認知症について知ろう―当事者から学ぶー

認知症は、誰でもかかる可能性のある脳の病気です。高齢者の病気と考えられがちですが、65歳未満で発症する若年性認知症の人は、都内に約4,000人いると東京都は推計しています。先日、若年性認知症の人のお話を伺う機会がありました。

認知症について自覚症状のある人とない人といるが自分は後者だったという話から始まりました。ある日働いていた会社から言動がおかしいといわれ病院で診察を受けたところ、うつ病と診断され、半年間休職。仕事に復帰したものの、2年前よりひどくなっていると会社からいわれたのが48歳の時です。PET、アイソトープなどの検査、心理検査などを行い、前頭側頭型認知症で、進行していて今後治る見込みがないと診断されます。

翌日会社で傷病手当を受けるか、退職にするか決断しなければならず、退職を選択します。

その後1年半の引きこもりを経験されています。

そして元上司に誘われ、板橋区に転居。若年性認知症の会や、当事者や家族の会、東京都健康長寿医療センターなどいろいろな関係者に出会えたことから、現在は当事者として話をする活動や、料理を作ることが好きなので子ども食堂、キッチンクラブ、認知症カフェに関わっています。人とのつながりが大事なので、千代田区の本人ミーティングや町田市の当事者の会に参加し、悩みを吐き出すところ、抱え込んでいることを言える場所が求められていると話されました。しかし、認知症に対してまだまだ偏見があり、酒やたばこを飲んでいるからそうなったんだろうといわれたり、知らないうちにものをもってお店を出てしまい、警察で勾留されたことも…

認知症にはいろいろな種類があり、前頭側頭型にも3つあり、飲む薬も違うことや認知症基本法ができて本当に良かったと思うと言われました。

認知症の人への対応については

*その人が何に困っているのか、知ることが大事

*本人の意志を確認しないで家族が決めてしまうことはよくない

*「はい」「いいえ」で回答するアンケートには「はい」と答えてしまう。できないことは否定ととらえ、何でもできると答えてしまうので第3者が総合的に判断することが大事

*なんでもやってあげることはサポートする人の自己満足にすぎない

など当事者だから見えることを話してくれました。

会場から将来について考えているかという質問に対して

特に考えていない。アルツハイマーの高齢者の人は昔を覚えていて、料理の資格を活かして仕事に就ける人もいるが、自分は覚えていないので、楽しく好きなことをしたりして、家族の負担を減らしている。85歳の母親は家に帰ってこなくていい、好きにしていいと言ってくれている。障がい者の○○さん、認知症の○○さんには違和感があるので、一人の人間として対峙してほしいし、普段通りの生活を望んでいる。上下関係ではなく、同じ目線で話を聞いてほしい、何に困っているかを聞いてほしいと話され、終わりました。

若年性認知症は認知度が低く、稀なため、多くの場合、うつ病などの診断と治療を受けて、診断がつくまで、時間がかかるといわれています。診断が早ければ早期治療ができ、進行を遅らせることができる病気でもあります。高齢者の認知症と違い、仕事や活動ができる世代なので病気を受け入れるには大変な葛藤があると思います。

東京都健康長寿医療センターの方のお話では、これまでは認知症の治療といえば、入院が対象でした。2014年ごろは本人の意見を聴くことなく施策を進めてきたが、2023年に成立した認知症基本法では当事者の意見が入り、認知症になっても希望をもって日常生活を過ごせる共生社会の実現を目指すことになりました。85歳以上の3人に1人が認知症になる今、排除ではなく認知症の人との共生が求められます。治療薬として注目されているレカネマブ薬についてもアルツハイマー型の人の治療薬であり、副作用もあり、薬価も高いという説明がありました。

葛飾区には高齢者総合相談センター(地域包括支援センター)が14か所設置され、認知症の家族会や認知症カフェがありますが、若年性認知症の人や家族が安心して話すためには悩みや抱え込んでいることが吐き出せる場所が望まれます。また当事者の話を聞くことは自分事として認知症の理解をすすめることにつながります。

認知症施策推進大綱(概要)