京成本線荒川橋梁架替事業の工事説明会に参加
今回架け替え工事をするのは堀切菖蒲園駅から京成関屋駅間の約1.5㎞です。最初に今回の工事に至った経過について説明がありました。水の調節によって洪水の被害をなくすため、1930年荒川放水路が完成。翌1931年に京成本線荒川橋梁が完成しましたが、高度経済成長期の地下水の汲み上げによって江東、江戸川を中心に広域的に地盤沈下が起き、最大4.5m、荒川橋梁付近では3,4mの沈下が確認されています。この地盤沈下によって低くなった堤防はかさ上げされましたが、橋梁のところはかさ上げができないため、付近の堤防より3.7m低く、台風で増水した場合は橋梁部分から水が溢れて堤防が決壊することになります。1947年のカスリーン台風規模の洪水で堤防が決壊した場合、浸水面積は約1.800ha、被災人口は約30万人と想定されています。そこで、架替工事が計画されました。
戦後最大雨量を記録した2019年の台風19号では橋梁の桁下1.2mまで水位が上昇し、葛飾区でも初めて、警戒レベル4の避難勧告を発令し、全ての小中学校や、その他の公共施設を避難所として開設して、区内で2万人近くが避難したことは記憶に新しいことです。
2021年12月、国土交通省関東地方整備局はかさ上げの完了予定を従来の2024年度から37年度に延期、13年遅れることを明らかにしました。延期の理由は住民からの強い要望があり、用地取得の範囲を縮小するため、橋の架け替えルートを現在の橋により近い位置への変更と切り替え工事の工程を何段階にも分け、線路を切り替えながら新ルートを建設する必要が生じたことにあります。一刻も早い橋梁部の架け替え工事が望まれますが、工事の完成は2037年なので、16年かかります。事業費も364億円から730億円へと倍増しました。
会場の参加者から「工期を短くすることはできるか」という質問があり、国土交通省荒川下流河川事務所担当者も「期間はできるだけ短くしたい。検討していきたい」と回答しました。
現在葛飾区は堤防かさ上げ完成までの水防対策として、水防訓練を行っています。地球温暖化の影響で、大型台風が発生し、区内を流れる河川が氾濫するような大雨が降ることは十分に想定されます。経済成長によって発生した地盤沈下は一旦生じると回復が困難です。今後工事が計画より早く完了することは大事なことですが、私たち人間の活動が自分たちの暮らしや命を脅かしていることを理解して、一人ひとりが環境への負荷を減らしていくことが重要です。