子ども・若者のための街の保健室 ユースウエルネスKuKuNaってどんな場所?

  

まつしま病院助産師でユースウエルネスKuKuNa室長の幸﨑若菜さんに2024年4月まつしま病院内に開設したユースウエルネスKuKuNaについてお話を伺いました。

◆データで見る子どもを取り巻く課題

厚生労働省統計データの2023年年齢階級別出生数と人工妊娠中絶件数の比率(全国)では成人女性の中絶率も高いのですが、19歳以下の中絶率は70%以上に上っています。身体接触や性交を伴う性暴力被害の経験のある若年層(16~24歳)では16~18歳(高校生)の時に被害にあったという人が最も多く、性交を伴う性暴力の加害者は、学校・大学の関係者、元交際相手、SNSなどインターネット上で知り合った人が多いことがわかります。被害にあっても半数以上が誰にも相談していないか、相談先は身近な友人、知人、家族や親せきが多く、被害者は「異性と会うことが怖くなった」「だれも信じられなくなった」など安全な生活が奪われています。

2023年7月13日不同意性交等罪・不同意わいせつ罪が改正されましたが、児童買春の検挙件数は2024年2年連続増加し、過去10年で最多。SNSに起因する被害児童数は減少傾向にありますが、2024年の小学生の被害者児童数は2015年の3倍以上に増えていて、依然深刻な状況に変わりはありません。

◆もし、子どもから性被害を告白されたら

子どもの言葉をそのまま使用し、誰に何をされたのかがわかればOK。大人側から事細かに話を聞かずに警察もしくは児童相談所に相談します。

◆「リプロダクティブヘルス・ライツ(SRHR:性と生殖に関する健康と権利)」

セクシュアリティ「性」を自分で決められる権利と「生殖」に関するすべてのことを自分で決められる権利はすべての人の「性」と「生き方」に関わる重要な問題です。

自分が女の子である、あるいは男の子である、と自覚し始めたとき、その自分の「性」を肯定的に捉えるか否定的に捉えるかで、その後の自己肯定感・観に大きな影響を及ぼすことになるからこそ、乳幼児期からの性教育が必要です。というのも幼児期から育まれたジェンダーバイアスをぬぐい去るのはたやすいことではないからです。

◆包括的性教育とは

国際的な性教育の指針となっている、国際セクシュアリティ教育ガイダンスは年齢に応じて学習目標を設定し、性的発達の各段階の課題を明確にしています。自らの健康・幸福・尊厳への気づき、尊敬の上に形成される社会的関係と性的関係の構築、それぞれの選択がいかに自己と他者に影響するのかという気づき、生涯を通して自らの権利を守ることの理解と実行が具体化できるための知識・スキル・態度・価値観を子どもに獲得させることが主な目的です。

◆子ども・若者のための街の保健室が必要な理由

スウェーデン国内には約250のユースクリニックが存在します。市によって異なりますが、基本的に18歳〜25歳の若者が無料で利用することができる(12~24歳という箇所もあり友人や家族関係の悩み、セックスに関する疑問、性感染症に関する相談、避妊、緊急避妊、たばこ、アルコールの問題、デートDVなどを、常に交代制で勤務している助産師、看護師、臨床心理士、産婦人科医に相談することができる公的な医療機関です。

日本でも社会構造の変化、人間関係・家族関係の問題、精神面の問題が複雑に絡みあい、課題を抱える人が増えている現状があり、子どもや若者も例外ではなく、スウェーデンのようなユースクリニックが必要です。子ども・若者のための街の保健室ユースウエルネスKuKuNaの活動を通じて、子ども・若者を大切にする社会をめざす必要性を感じています。

幸﨑さんからお話を聞き、学校教育では、学習指導要領のはどめ規定により、避妊や性交など実践的な内容が教えられず、子どもや若者は性に関する正しい知識がないまま、予期せぬ妊娠や性暴力、SNSによる性被害などによって子どもの権利が侵害されてきました。特に性暴力は人権侵害であり、リプロダクティブヘルス・ライツ(SRHR:性と生殖に関する健康と権利)が大切な視点です。