自分らしい地域の立ち回り方 ~地域活動の実践者が語る 人と人との距離感のデザイン~

地域のつながりや支え合いは大切ですが、ただ関係を築くだけでは想いのすれ違いやストレスが生じることがあります。「距離の取り方が難しい」「 つながりたいけれど、無理はしたくない」といった思いを持つこともあります。今回は元ケアマネジャーとしての経験を活かし、まちづくりやコーヒースタンドに取り組む合同会社えんがわ 代表の森川 公介さんから地域での立ち回り方のヒントや関係づくりの実践的な方法をお話いただきました。森川さんはケアマネジャーさらに主任ケアマネジャーとして認知症介護など福祉の現場に関わる中で地域貢献も担ってきました。しかし、地域には様々な課題があることに気づき、介護の前に地域全体にやさしい環境が必要ではないかと思い、昔のようにはいかないものの2021年に「あやせのえんがわ」を立ち上げました。理念に「この地域に根を下ろし、いとおしい暮らしを作ります」を掲げて活動しています。

 

地域の立ち回りの「立ち回り」って何?

■自分と他者との間にある「ちょうどよい距離感」の取り方

■自分が安心できる「関わり方」

■さまざまな人やコミュニティのなかでの「身のこなし方」=状況や相手に応じてふるまいを調節する

中学校区を日常生活圏とする地域包括ケアシステム(住まい、医療、介護、予防、生活支援が一体的に提供される仕組み)が2012年に、2016年より重層的な支援体制(相談支援、参加支援、地域づくり支援)による地域共生社会が提唱される。地域課題を行政だけで解決するのではなく、市民が解決することが求められるように変わってきた。葛飾区では地域の支えあいについて「誰もが、住み慣れた地域で支えあいながら、安心して暮らし続けるまち」と基本計画の中に描かれている。

支えあい安心して暮らすために「市民」はどんな意識を持てばいいのか?

森川さんは市民が地域を共有しているという意識なのではと話す。安心して暮らせるか、暮らせないかは地域の人次第だと。みんなで支え合うのは簡単ではない。いきなり支え合おうといっても信頼関係を構築できないためにすれ違いや干渉・衝突、損得感情、責任の押し付け合いなどが起こる。まずは自分を知ること、相手や地域、社会を知り、ちょうどよい距離感を見つけていくことが前提には必要である。例えば、「話は短くする」ことについて自分はどう思うか。気づきになるのか、共感になるのか、違和感を感じるのか。もし、違和感を感じたら、掘り下げて考え、自分なら何ができるか考えてみる。その結果、良好な関係性を築くことができるようになると説く。

 

昔なら家族や近所とのつながりで解決してきた暮らしに関わる課題、介護や認知症などの問題を今は地域に暮らす市民同士の支え合いや助け合いで解決していかざるをえない状況です。そのためにどのようなコミュニケーションを取ったらいいのか、一人ひとりが考えていくことは大切なことだと思いました。ただ、解決には市民だけでできるものばかりではなく、行政のちからも必要です。特に「誰もが住み慣れた地域で暮らし続ける」ためには、危機にあるといわれる、日々の暮らしを支える訪問介護を持続可能なものにしていくことも忘れてはいけません。今後も生活を支える制度やしくみの充実を求めていきます。