多様な家族の在り方を考える~里親子育てのお話~里親という言葉を聴いたことはありますか?
ますだなつみさん(養育里親/訪問看護師)にまだまだ知られていない、養育里親についてお話いただきました。
里親と養子縁組の違い
里親とは…児童福祉法に基づいて児童相談所が要保護児童、社会的養護の養育を里親に委託する制度
養子縁組とは…民法に基づいて法的親子関係を成立させる制度
ますださんは訪問看護師として仕事をしています。予定日より早く生まれた赤ちゃん、体重が小さい赤ちゃん、生まれつき病気をもっている赤ちゃんなどが入室するNICU(新生児集中治療室)から退院後、保護者は赤ちゃんの日々のケアを担いますが、訪問看護師は人工呼吸器など医療的ケアが必要な場合、子どもの健康管理と家族の支援を行います。主に松戸の子どもたちが訪問していましたが、訪問看護の仕事する事業者は少ないため、金町でも仕事をしていたそうです。
忘れられない子どもとママ
高校生のカップルに生まれた子どもの支援をした時、ママは16歳。パパは実家へすぐに戻っていってしまったそうです。子どもが障がいをもって生まれ、気管切開が必要で病弱だったので、8人くらいの医療福祉機関による支援チームを結成し、支える体制を整えました。ママは昼の仕事をはじめ、そのうち夜も仕事を始めます。16歳のママにとって赤ちゃんはかわいいけど、母親にはなれない状況にあったとのこと。医療的ケアが必要なため、保育園には預けられないので、祖母(若い)がケアをしたりしていましたが、ある時、周りの大人が誰も知らない中、15歳の友人に一晩預けて亡くなってしまいます。健常の子どもなら、事件になったのではないかと思われましたが、ニュースにはなりませんでした。この時休職期間中だったため、休職してなかったら亡くならなかったのでないかと思うと今でも後悔が残るとのことでした。
里親として
同時期に不妊治療をしており、夫も頑張ったが授かることができませんでした。半年くらい経って夫が大人として子どもを育てる経験をしたいと言い出し、自分も子どもの命を守るためには一時的な関わりでなく、だれか一人の子どもに関わりたいと思ったそうです。二人で里親になることを何度も確認し、6か月の里親研修を受け、登録、勉強会に参加しながら、待機していたところ、突然、児童相談所から3歳の男の子の養育の連絡があり、即日返事を求められます。養育を決心し、一時保護所に行き、3歳の男の子には兄弟がいましたが、一時保護所では兄弟でも一緒にいることはできず、兄弟は別々に過ごしていたそうです。クリスマスの日だったので、プレゼントを持っていきたかったが禁止のため、手ぶらで会いに行くことになったそうです。年始を挟んで3週間で暮らし始め、3歳の子どもには女の子2人、男の子2人の兄姉がいたので、児童相談所からは上手に養育してほしいを言われ、今は年に3~4回3家庭で交流しています。
家族や親ってなんだろう?
看護師として家族支援、家族の機能について学ぶ里親になって家族や親のことを考えるようになったそうです。師匠と思っている人に「子育ては究極の人材育成」だといわれたそうです。
子どもは環境を選べないけれど、代替は可能。このことは子育て中のママにも言えます。
心が安らげない家族と暮らすより、安らげる他人と暮らせるほうがいいのではないか。自分が望めば、だれとでも何時からでも家族になれるはず。既存の家族の枠を超えることができるのではないか。家族は自分でつくれる。今は自分の親や家族を見つめなおしているとのことです。
全ての子どもたちが安心で安全な環境で信頼できる大人から愛情をたくさんたくさん受けとって、子ども達が豊かに成長できる社会を創っていきたいから、もっと多くの人に里親について知ってもらいたい、と締めくくられました。
葛飾区には施設で暮らしている子どもが2~300人います。また、区内には里親家庭が約30家庭あります(2022年度時点)全国平均で里親への委託率は約22.8%。まだまだ施設で暮らす子どもたちが多くを占めていますが、例えば虐待を受けていた子どもが信頼できる大人に出会うことで虐待の連鎖が止まることがわかっています。2016年の児童福祉法の改正により家庭的な環境で暮らす家庭擁護をすすめることになりました。
子どもが成長するには「家庭的」な環境が必要であることは、子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)でも謳われており、国際的な常識になっています。子どもにとっても養育する大人にとっても安心して暮らしていけるよう、社会全体で支援する体制が必要です。