なぜ性教育が必要?性教育とは命を守ること~自分の命と人生を守るために~
性教育とは命を守ること~自分の命と人生を守るために~
(公社)東京都助産師会足立葛飾地区分会会長、NPO法人さんばはうす葛飾代表理事、いで助産院 院長 助産師 井出陽子さんに性教育についてお話を聞きました。
性教育について子どもたちに伝えたいことは?命を守ること、人生を守ること。そのためにどうしても知ってほしいことを伝えること。
なぜ性教育が必要?
1.予期しない妊娠を防ぐ
2021年度衛生行政報告例の妊娠100に占める中絶の割合(%)では14歳以下が79.6%、15~19歳61.9%と10代が突出して多い。なぜ、予期しない妊娠がおきるのか。日本産婦人科学会HPによると、①性行為がある②妊娠の仕組みを知らない③避妊の知識がない④妊娠週数の数え方を知らない⑤中絶は21週6日までということを知らない⑥自分の身体についての知識がない。子どもたちの中で知っている子どもと知らない子どもの二極化している。予期しない妊娠は、貧困やDVにつながりやすく、安心して過ごせる居場所が見つからない。その結果、予期しない妊娠を繰り返す、性感染症や性被害にあうといった負の連鎖を起こしてしまう。
2.性感染症などの病気から守る
①若者に最も多い感染症 性器クラミジア・淋菌②1度かかると治りにくい せんけいコンジローマ・性器ヘルペス③最近増えている梅毒④その他 膣トリコモナス・ケジラミ症・性器ガンジタ・B型肝炎・C型肝炎・HIV/AIDS
性感染症にかかったら、男子は泌尿器科、女子は産婦人科または婦人科を受診し、治療しないと治らない。性的接触により広がっていく。
3.性被害の防止
25人に1人の女性、100人に1人の男性が無理やり性交を受けた経験があり、約83%は面識のある人によるもの。被害にあった時期は小学校入学前女性8.8%男性5.9%、小学生の時女性11.1%男性11.8% 中学生の時女性4%、男性11.8%。
4.自己肯定感を高め自分らしく生きる
子どもの育ちには段階があり、最終的に自立をめざして一段一段登るもの。そのために安心感・信頼感が持てる環境があって自己肯定感が育っていく。このような土台があって性教育について話すことができる。
性教育とは 性に対して正しい知識と正しい感覚を身に着けて生活していくことで、自分の身体と心を大切にし、実りある人生を自分で選んで生きていけるようにすること。
⇒自分や相手を大切にし、自分で自分の人生を選んでいくための教育=人権教育
参考:国際セクシュアリティ教育ガイダンス https://sexology.life/world/itgse/
5.性の話をいつからするの?性の話は恥ずかしい?
まずは大人の偏見を捨てることが大切。いやらしいことではなく、自分の身体と心を大事にし、自分を守るための方法を伝えること。
伝えるポイントは
・誰もが経験する普遍的な事実のみを伝える
・性の話は嫌悪感を持つ子や被害の当事者の子もいる。無理に聞かなくていいと伝える。
・皆には生きる力があり、自分で人生を選んで生きていってほしい(自己肯定感)
・必要な知識を身に着け行動してほしいこと
・悩んだり迷ったりしたら誰かに頼ってもいいこと
3種類の性がある
・生殖の性(いのちをつないでいく性)・親愛の性(コミュニケーションとしての性、喜びの性)・品物の性(性産業、商品化された性、暴力と支配の道具としての性、一方的に搾取される性)
体と性を取り巻く現状は
性を商品として扱っている情報量は30年前の600倍。子どもたちが性の知識を取り入れる先はポルノ雑誌、アダルトビデオ、インターネット。その情報のほとんどが正しいとは言えない。
文部科学省が性犯罪・性暴力対策の強化の方針を打ち出す。
〇性犯罪・性暴力は、被害者の尊厳を踏みにじる行為であり、心身に長期にわたる深刻な影響を及ぼす。性犯罪・性暴力の根絶に向けた取組や被害者支援を強化していく必要。
○性犯罪・性暴力の根絶を求める社会的気運の高まり。
○性犯罪・性暴力の加害者・被害者・傍観者にさせないための取組が必要。また、子供の発達段階や被害者の多様性などに配慮したきめ細かな対応が必要。
性犯罪に遭わないための生命(いのち)の安全教育について(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/content/20211027-mxt_kyousei02-000018868_004.pdf
教育現場でも伝えられることはたくさんあるはず!
生きていくのに重要な教育として性教育があります。これまで性について語るのは恥ずかしいという大人の認識が子どもたちに性について学ぶ機会を奪ってきたかもしれません。子どもたちを性トラブルから守るために必要なのは、子どもたち自身によって性について考える力をつけるための性教育ではないでしょうか。性教育を受けなかった私たち大人も性教育を学ぶ機会が必要です。