お金の流れと食の未来~金融機関の社会的責任とは~

12日の学習会では講師にNPO法人APURA/FAIR FINANCE GUIDE IAPANの野川未央さんを迎え、SDGsや持続可能な社会における金融について学びました。

世界ではダイベストメント(融資や保険引き受けに打ち切り、投資撤退)という流れが出てきています。例えば、外国の大手金融機関や保険会社、自治体などが2017年ごろから、化石燃料産業への投資を停止しています。化石燃料産業への投資が気候変動を加速させる要因のひとつと考えれば、融資の停止することで気候変動を止めることになります。

多くの人が銀行や郵便局、信用金庫などにお金を預けたり、お金を投資するために収益を生み出してくれる株や債券を購入したり、その他の投資先に託しています。銀行は預かったお金の0.8~1.2%(準備預金)を残して投融資をして利益を得ています。除草剤のグリホサートや遺伝子組み換え作物の開発・販売をした「モンサント社(今は存在しませんが)」を支えていたのが三菱UFJ、みずほ、三井住友銀行の3行で、うち一番支えていたのが三菱UFJでした。一方、三井住友は住友化学(日本でネオニコチノイド系農薬などの浸透性農薬を開発する第一人者)の投融資を行い、メガバンクはいずれも農薬産業で利益を確保しています。また、日本に届くバナナの8割がフィリピンのミンダナオ島産ですが、ミンダナオ島のバナナ農園で働く労働者や周辺に住む子どもたちは健康や人権、環境などの深刻な問題を抱えており、解決されないままにあります。これらは住友商事の系列会社であったスミフル社の下で起こっていました。同じようにパーム油を扱うインドネシア最王手食品事業者のインドフードは生産現場に厳しいノルマを課し、ノルマ達成のために子どもや妻が無償労働をしなければならず、さらに原生林の伐採によって生態系へ悪影響を与えています。パーム油はカップ麺、チョコレート菓子、ポテトチップス、業務用食用油、合成洗剤として広く身近なところで流通しています。インドフード支えてきたのはみずほ、三井住友、三菱UFJの日本のメガバンクでした。         

フェアトレードのチョコレートやRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証の商品やせっけんを買えば、パーム油を生産するプランテーションで起きている問題に直接関与することは避けられますが、銀行がどのような方針で投融資しているのか、知ることが重要です。

2009年から大手金融機関の投融資方針の市民による格付け(スコア)がオランダで環境・人権・開発NGOや消費者団体の共同でスタートしました。日本では2014年からFair Finance Guido日本版で銀行ガイドを開設して毎年スコアを更新しています。日本のメガバンクでも遅ればせながら、方針を発表しました。2018年にすべての銀行グループはクラスター爆弾の製造棟に関与する企業への投融資禁止を表明。核兵器はりそなだけが開発・製造・所持に関与する融資を禁止。石炭火力発電所については対象金融機関すべてによる投融資方針が出そろったものの、三菱UFJ、みずほ、三井住友、三井住友トラスト、ゆうちょの方針は例外規定が幅広く、方針の有効性が疑問視されるなど、考察されています。海外の銀行のフェアファイナンス・ガイドではスウェーデンの大手銀行は気候変動対策や人権侵害防止の観点から大幅に改善。また、化石燃料産業を一切新たな投融資先に認めない方針を立てた大手銀行もあります。オランダの大手銀行グループでは先住民族の権利を尊重する方針を策定しています。

銀行が健全性と利便性以外に倫理性を問われる時代になっています。私たち市民が銀行の姿勢を問い続ければ、銀行が変わり、世界も変わっていくのだと思います。私たち市民が銀行の方針を知ることで預け先を選択することができます。今地球に起こっている問題に対して何ができるのか、考えるきっかけになりました。