子どもの“食″の貧困~自立と支援に求められるもの~

子どもの自立と支援に関する調査報告会が行われました。最初に支援者の聞き取り調査の経過が特定非営利法人ひとまち社から報告され、そのあと阿部彩さん(東京都立大学教授で子ども・若者貧困研究センター長)を講師に「気づかれにくい子どもの貧困~家計の赤字と子どもの食~」というテーマで話されました。

聞き取り調査の対象は子ども食堂や地域の居場所活動、食材配布、一時保育など子どもに関わっている支援者。調査期間は2020年11月から2021年2月まで。件数は30件(事例は73事例に及ぶ)。報告書には支援事例、地域や自治体、国に求めることなどがまとめられています。調査からはどの支援者も地域で暖かく、子どもや親を見守りつつ、必要な支援を行っています。しかし、親が精神疾患を抱えていたり、両親が揃っていても厳しい状況であったり、家族の内実は外からは見えないため、もっと多くの困難な事例が埋もれているだろうと報告されています。「子ども食堂への偏見がある」という記載もあり、子どもの貧困は社会の問題という意識をもって、暖かい気持ちで接することが求められます。

阿部彩さんからは主に東京都の子どもの生活実態調査(2016)をもとに子どもの貧困と「食」の格差について話されました。生活実態の調査対象は4自治体の小学5年生、中学2年生、16~17歳の子ども本人とその保護者。回答は子ども8.367、保護者8.429。困窮層においては食料さえもままならない世帯が7割。高校生ではほぼ毎日2食が12.5%、ほぼ毎日1食も0.7%と5人に1人が食料に困窮しています。さらに踏み込んで野菜や肉や魚の摂取の頻度についても質問しており、困窮層では動物性たんぱく質、野菜、果物などの摂取の割合が少ない結果がでています。

支援の例として、アメリカで行われている支援策が紹介されました。

①SNAP(栄養補助プログラム)人口の13%へ支給額は最高約8万円/4人世帯/月

②Child&Adult Care Program(児童大人ケアプログラム)420万人の児童および13万人の大人(毎日)保育。介護施設における食事提供

③Child Nutrition Program(児童栄養プログラム)

④Special Suppl.Nut.Program(妊婦+乳児栄養プログラム)

⑤Fresh Fruit&Vegetable Program(小学校への野菜・フルーツ提供)

⑥School Lunch Program(学校昼食プログラム)

⑦Summer Food Service Program(夏期食料サービスプログラム)2019年10月~1年間 朝食6億食、昼食7億食、夕飯1,5億食など

一方日本は

①Child&Adult Care Program(児童大人ケアプログラム)保育・介護施設における食事提供

②School Lunch Program(学校昼食プログラム)

給食も完全給食の実施は小学校ではほぼ全校ですが、中学校では少なくなり、高校はもっと少なくなっています。育ち盛り、食べ盛りの身体をつくる大切な時期に十分に食べることができない子どもたちがいるにもかかわらず、アメリカと比較するとその内容は残念と言わざるをえません。

地域では子ども食堂をはじめ、いろいろな団体や個人が子どもたちに寄り添って活動を続けていますが、安定的に支援していくには公的な支援が必要です。コロナ禍で減収により水でお腹を満たしたひとり親の子どもの記事もありました。2013年に「子供の貧困対策の推進に関する法律」が成立していますが、子どもたちの食の貧困の解消は喫緊の問題です。