~誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して~
「死にたい」「消えたい」「このままじゃ生きていられない」
自殺はその多くが追い込まれた末の死であり、その多くが防ぐことができる社会的な問題です。そして自殺対策は「生きることの包括的な支援」としてだれもが必要な支援を受けられるようにすることが重要です。自殺対策の現場で自殺対策支援コーディネーター(相談を受けて支援機関につなげる)をしているナガヨシさんから、どのように人は自殺に追い込まれているのか、お話を聞きました。
自殺者の推移は
1983年 2,500人
1992年 2万1084人 2万人台を推移してきたが
1998年 3万2862人へ
2003年 3万4427人と最多になった。
東京マラソンのランナー約3万2千人に匹敵する数字。自殺の実態である。1998年とは都はどんな時代だったか。前年の1997年11月24日、山一證券が破綻し金融危機に突入。底割れが起きた。2000年前後自殺に対しての認識は個人の問題と捉えられていた。諸外国ではロシアやハンガリーといった社会主義の国の男性の自死率が高いが、民主主義の国の中で日本は極めて高い。最近は自殺を社会の問題として考える人たちが増えた。
個人の問題から社会の問題へ
2005年をピークに国を上げて取り組むため2006年に自殺対策基本法が成立。2016年自殺対策基本法が改正され、都道府県市区町村すべての自治体が計画をたてることになった。遺族支援に取り組んでいる民間団体から「個人だけでなく、社会を対象とした自殺対策を実施すべき」と総合的な対策が要望される。失業・倒産・長時間労働・多重債務など自殺に追い込まれる問題を解決することで防ぐことができる。平成22年労働基準法改正により自己破産ができるようになった。借金をなぜしなくてはならなかったのか。安易に貸していたのではないか。国はちゃんと見ていたのか。捉え方が個人の問題から社会の問題に変わった。2023年は21,818人とコロナ禍で減少したが男性は増えている。男性だから強くなきゃいけないといった固定的観念の中で自死を選んでいる。男性は女性の2倍、男女とも50歳代が多い。自殺の原因としては健康・家庭・経済の3つ。女性は家庭、男性は経済問題に起因している事例が多い。
インターネット空間で子どもの自死が増えている。2003年小中高507人、2022年508人大人は減少しているのに子どもは増え深刻である。そのためには死にたいという人へのアプローチ、子どもの自殺対策、予算も必要だ。子どもを保護する立場にある国が実態解明をする必要がある。実態解明ができなければ対策もできない。その結果、68%も増えた。子ども家庭庁は子どもの緊急対策プランを作成。市区町村は月別に公表。社会全体で何とかしなければいけない。自治体の役割としては自殺対策の義務化、冊子の配布、だれでも相談窓口の設置などがある。
自殺を考える人の状況
50代男性 失業、多重債務、相談したら住むところがなくなるのでは…
30代女性 うつ病、夫と不和
20代 親の離婚、幼少期の虐待、親からの否定、脳が処理できないため上司の話が理解できない。消えたいと思う…
自殺の一歩前、三歩前にいる人とは、就職氷河期世代、いじめ、生活が不安定、発達障害の場合は親も同じ障害がある場合もあるなど問題を抱えている。頼れる大人がいれば、相談のアクセスがしやすければ…。自分のそばに死にたいと思っている人がいたら、なんで、あなたはそんな気持ちになっているの?心を寄せる、できることから始める。その人の気持ちとは関係ないことで複合的な理由で追い込まれている人の自殺を思いとどまらせようと説得をするのはやめてほしい。
自治体に対して求めることは
- ワンストップの対応・支援、包括的にアドバイス
- 生活保護のハードルの高さ 本人だけで申請に行った場合、不正受給のチェックではなくセーフティネットとしての機能が求められる。扶養照会は必要ないこと、無料診療所も使えることを知らせる
- 自殺に追い込まれている人特有の感情や精神状態の受け止め、ゲートキーパーの講習の推進
ナガヨシさんには自殺対策の歴史、自殺者の状況、自治体が取り組んでいる包括的な支援、自殺を考える人たちのリアル、自殺の一歩前、三歩前にいる人たちへどのように寄り添ったらいいのか、などお話いただきました。どんな社会になったら人は最後の決断をする前に、他者に頼れるのかを私たち一人ひとりが考える必要があります。だれもが安心して暮らしていくために地域や社会がどうあればいいのか、ともに考えていきたいと思います。